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Under the English Sky


英国、ケンブリッジでの生活で感じたことを書いていこうと思います。
by ellisbell
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スカーボロ

スカーボロ_c0105386_5301693.jpg
今日のケンブリッジは一日曇り空。お昼間でも息が白くなっていました。

それほど寒くてたまらないという感じでもないのですが、窓を開けていると冷えるし、自転車に乗るのにはもう手袋が欠かせない感じです。日本では、今日は二十四節気の立冬。友達の話では今年は日本も暖秋だとか。やっぱり温暖化の影響なのでしょうね。寒いのは大嫌いな冷え性の私ですが、異常気象についてはちょっぴり心配になります。でも、先週の旅行中はすべてスッキリとした秋晴れ。そして寒くもなかったのが良かったです。

ハワースの次に訪れたのはスカーボロ。Simon & Garfunkelが歌ったScarborough Fairで有名でしょうか(もともとは古い英国のバラッドです)。ヨークから北へ電車で1時間ほど、東海岸でも人気のある、北海に面した海辺のリゾートです。街自体は、シーズンオフのせいもあって、静かでのどかな田舎町といった感じでした。ただし、とても高低差のある街で、ビーチに降りるリフトがあるかと思えば、海抜100mほどのところにあるスカーボロ城には、文字通り「上って」いかなくてはなりません。訪れた日もいいお天気で、北海は想像以上に穏やかでした↑。けれどもこの街の歴史はこの海のように平穏ではありません。ヨーロッパに向き合っているその地形から容易に想像できるように、この地は重要な要塞があった場所。それが、写真左手の丘のそびえ立つスカーボロ城なのです。けれどもその前に、このお城の手前にある教会には是非訪れたいお墓があります。家族から離れ、スカーボロのセント・メアリー教会にひとり眠っているのは、ハワースのブロンテ3姉妹の末妹、アン・ブロンテ。期せずして今回の旅はブロンテ尽くしとなりました。

スカーボロ_c0105386_5303634.jpg駅からたった一本のメインストリートをまっすぐ下り、古い街であることを証拠づけるかのようなマーケットホール(屋根付きの市場です)からお城を目指して丘を上がっていくと、その教会につきます。3姉妹の中ではもっとも存在感の薄い彼女ですが、1847年、シャーロットの「ジェイン・エア」、エミリの「嵐が丘」と同時に「アグネス・グレイ」という小説を出版しています。日本ではあまり知られていない小説家ですが、英国ではテレビドラマ化などもされていて、ヴィクトリア朝文学を愛する人たちにはよく読まれている作家です(そんなことを言ったら同じく日本ではマイナーですが、ギャスケルなんかもよくテレビドラマ化されているのですよね。BBC万歳!)。1848年に、ブロンテ家の唯一の男の子ブランウェルが結核(だろうと今では推測されています)で亡くなり、半年もしないうちにエミリが同じ病で世を去り、悲しみにくれるシャーロットはもうひとりの、いつも控えめで穏やかな末の妹もまた同じ病に冒されていることを見逃していました。その症状に気付いたシャーロットは絶望しながらも、海辺の保養地スカーボロに行きたいという、妹の最後の願いを叶えるべく、アンをこの地に連れてきます。しかし長旅に彼女の身体はさらに弱り、わずか3日をここで過ごしただけで、「シャーロット、勇気を持って」と励ます言葉を最後にアンはこの地で息を引き取ります。シャーロットは深く嘆きながらも、アンが願った海の見えるこの地に妹を葬って、ひとりハワースに帰るのです。ひとりぼっちでこの地に眠るアンをかわいそうだと思うこともありましたが、今ではそのお墓にはたくさんの人が訪れお花が絶えず供えられています。何よりも、秋の光の中で見たそのお墓は、彼女の人柄そのままの穏やかな雰囲気に包まれていました。

スカーボロ_c0105386_5304880.jpgそして、スカーボロ城。ローマ時代から続く歴史を持った地。12世紀に建てられた軍事要塞は、現在では無惨な廃墟と化しています。こわしたのはスコットランドまで遠征中の、市民革命軍を率いたクロムウェル(しかしアイルランドでもそうですけれど、スコットランドでもクロムウェルは残虐非道の悪人。ケンブリッジ近郊のイーリーが出身地ですが、イーリー辺りの人たちがどう考えているのかも一度聞きたいものです)。さらには、第一次大戦中のドイツ軍の誤爆のために、今では崩れた建物がわずかに残っているだけです。けれどもかえってそれが郷愁をかき立て、ロマンチックな姿を見せていました。ここからのぞむ北海は、この日はあくまでも穏やかで雄大で、戦乱が遥か昔のことのように思えました。

本当はこのまま海辺をホィットビーまで行きたかったのですが、交通の便が悪いところなので、次の予定(スコットランド)を考えて残念ながら断念。ホィットビーは、ドラキュラが英国に上陸した街です。ああ、行ってみたかった。小説ドラキュラも英国人の外国人恐怖症とコレラの流行に絡めて論じている学者がいますが、やっぱりスカーボロにしてもホィットビーにしても、ヨーロッパに面した(そしてヴァイキングの脅威におびえていた)地は独特ですね。英国ってバラエティ豊かな国だなぁとしみじみ思いました。
by ellisbell | 2006-11-08 05:31 | trip
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