Under the English Sky


英国、ケンブリッジでの生活で感じたことを書いていこうと思います。
by ellisbell
カテゴリ
以前の記事
お気に入りブログ
link

2006年 08月 25日 ( 1 )

ナショナル・ポートレイト・ギャラリー

c0105386_2043879.jpg最近、イギリスに来てくれる人に付き合ってロンドンに行くことが多いので、久しぶりに訪れる場所が多いです。

例えば、先日伯母たちを案内して、トラファルガー広場からウェストミンスター寺院、ビッグベンやロンドン・アイなどを久しぶりに見に行きました(時間の都合ですべて外側だけ・・残念!)。ロンドン名物ダブル・デッカーに乗って、ハロッズでお買い物、などという観光客コースも、10年以上ぶりです。それはそれで楽しい。ナショナル・ギャラリーは大好きなので何度も行っていますが、先日は、そのお隣にある、ナショナル・ポートレイト・ギャラリーに行ってきました(変人さんが、ここに行きたいと主張しました。大英博物館よりこちらを優先する人も珍しい(笑)。でも、私は個人的には大英博物館よりこちらの方が好きです)。

その名の通り、肖像画ばかりが9000点以上集められた美術館。10年以上ぶりに行ってみると、リニューアルされて、明るいエントランスから3階までエスカレーターが直通で運んでくれる設計になっていました。3階はテューダー朝から始まります。リチャードだのヘンリーだの、歴代の王の肖像画をたどっていくと、たどり着くのはエリザベス一世。テキストでよく見る肖像画です。ひときわ大きく、豪華で、当時の彼女の権勢がよく分かる肖像画。イギリスの地図の上に立っているのが印象的です。ほかにもいろいろ知っている人の肖像がたくさん見つかります。テューダー朝では久しぶりにシェイクスピアに会えるはずだったのに、どこかに出張中で彫刻しか見られなかったのが残念。

c0105386_20432521.jpg2階に下がってくると、そこは18世紀から19世紀。政治だけでなく、文化、芸術面でも名を残した人々がたくさん並んでいます。もちろん上階17世紀ではミルトンやクロムウェルなどを見つけて喜んでいましたが、2階にはもっとたくさん知っている顔があって、ワーズワースだのバイロンだの、オースティンだのキーツだのを遠くから発見しては一人で満足していました。知らない顔の文人などは、しげしげと、そうか、こんな顔なのか、次に会ったときには覚えておこう、と見つめます。知り合いに会うようでとても楽しい。そして、もちろんブロンテ姉妹。これは姉妹の中で唯一の男の子だったブランウェルが描いたものですが、やっぱり上手な肖像の中で見ると、下手っぴさが際だっています・・かわいそうなブランウェル。肖像画家を志したのに、ロンドンでこのような肖像画に衝撃を受けて、どんどん人生を破滅させて行くのですね。

19世紀末からは写真も加わり、コレクションがどんどん充実していきます。肖像画というのが、いかに宣伝であったかを再認識させられます。そこに顔があると、それで人としての存在感が増大するのはすごいことです。そして昔は本当に地位のある人しか肖像画を残すことはなかったのに、時代が下がるにつれて、そして写真の登場によって、一般人も自分が生きたという証を残すことが可能になって行くのですね。もっともここに飾ってもらうためには、ある程度の知名度や社会への献身が必要なことはもちろんですが。1階に降りるとそこはもう、デフォルメされた現代絵画の一部としての肖像画の嵐。例えばエリザベス1世の肖像画が、彼女の権勢を広く世に喧伝しようとしたり、ヴィクトリア女王の肖像画が、彼女がいかに家族を大事にしているかを描いて、世の模範であることを宣伝して支持を集めようとしたように、肖像が宣伝として機能していた時代が終わりを告げ、肖像を描くという行為自体の意味がさまざまな形で問い直されていることがとてもおもしろかったです。その意味ではとてもラディカルな美術館ですよね。

この美術館をじっくりまわって、一番印象に残ったのは、この美術館の成り立ちがものすごくイギリス的だということ。ミステリと伝記を何よりも好むイギリス人らしい美術館です。肖像画の集合を見ていると、これはもはや芸術作品とかいうものではあり得ないと思います。だって、へたくそなものもたくさん飾られているのだもの。そしてそれぞれの人物画に、これは誰で何をした人かという簡単な説明書きがついています。つまり、この美術館は巨大な人物辞典なのです。イギリスらしい、特徴ある美術館です。一度に全部を見るのはしんどかったので、途中で地下のカフェで休憩し(ここのブラウニーはまあまあおいしかった)、再度展示室に戻りながらそのようなことを思いました。ちょうど特別展でビートルズをやっていましたが、まさに大量生産された商品としての20世紀らしい肖像画もここには含まれるし、テューダー朝のエリザベス女王も、そして現在進行形で、現代の画家の描いた肖像画も展示されています。人物をどう描くか、あるいは人物を描くというのがどういうことかというのが、時代の変遷によって変わっていくことを実感できる、面白い美術館だと再認識しました。そしてもちろん、イギリス人がいかに人物伝が好きかということも。私の連れの変人さんは、顔の上半分だけにかぶるお面を購入(これであなたもアン・ブーリンってヤツです(笑))。肖像画って、人のアイデンティティって、とてもソリッドで、とても流動的なものだと思いつつ、美術館を後にしました。おもしろかったです。
[PR]
by ellisbell | 2006-08-25 20:42 | culture


ライフログ
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧