Under the English Sky


英国、ケンブリッジでの生活で感じたことを書いていこうと思います。
by ellisbell
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2006年 08月 19日 ( 2 )

アイルランド(北アイルランド編)

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ダブリンで車を乗り捨て、一路、電車で北アイルランドへ。

その前に午前中はダブリンの作家記念館を見て回りました。アイルランドの作家というとそれほどたくさん思いつきませんが、実際に見てみると「ガリバー旅行記」を書いたジョナサン・スウィフトをはじめ、知っている名前がずらり。もちろんジョイスも、オスカー・ワイルドも、私の大好きなゴシック作家達(偏愛する吸血鬼ものを書いてるレファニュとか)も、もちろんショウ、イエイツ、ベケットなどのノーベル賞作家たちの遺品もたくさんあり、それぞれオーディオガイドを聞きながらゆっくり見て回りました。(同じノーベル賞詩人なのに、ヒーニーがなかったのはダブリンと関係ないからなのでしょうか・・そういや、ラフカディオ・ハーンも写真だけが通路にちょろっと飾られてるだけで、かなり虐げられてました。ハーンは英文学史上でも日本文学史上でもちょっと異端扱いでかわいそうですよね。)中でも感動的だったのは、ジョイスの声が聞けたこと。英語のオーディオガイドだったので、ジョイス自身がフィネガンズ・ウェイクの一説を朗読したレコードの音声を聞くことができました。思ったより高めの声。さすがはフィネガンズ・ウェイクで、何を言っているのかはさっぱり分かりませんでしたけど(苦笑)。

そして、ダブリンのコノリー駅から電車に乗ります。ベルファストまでICのような特急電車で2時間ほどです。検札はどうなるのだろう、国境越えはどうなるのだろうとワクワク。電車で国境を越えるときにはいつも電車のスタンプを押してくれるから今回も楽しみです。が、結局誰も来なかった・・・テクニカルには、私はまだアイルランドにいるってこと??これでいいのかイギリス入国管理局!!ほかのEU諸国に比べて厳しいとされる英国の入管ですが、アイルランドとは協定があってかなり緩やかだというのはやはり事実のようです。アイルランド入国の際にはパスポートにスタンプ押されたんだけどな・・・ともあれ、ベルファストに着いて第一声は「寒い!」ダブリンや西の方も寒かったですが、ベルファストはさすがに北だから、お昼間なのに気温が16度。8月の頭ですよ・・雨が降っていて本当にふるえました。タクシーでホテルに向かったら、表示はポンド。そうですよね、今までユーロだったけど、北アイルランドは英国領です。英国に戻ってきたのです。

c0105386_5282072.jpg地図を見たら北アイルランドのインフォメーションセンターとアイルランドのインフォメーションセンターは違う場所にあります。そう、ベルファストというと、IRAの本拠地としてのイメージが強く、テロの影がさす暗い街という先入観をぬぐい去ることができません。何となく街自体も重苦しい感じがするし、雨のせいかしまっているお店も多く、何となくうそ寒い第一印象でした。アルスター銀行の本店や、アングロ・アイリッシュ銀行などという聞いたこともない銀行も通りに並んでいます。やはりカトリックとプロテスタント、ケルト系とアングロ系が対立している本場というイメージがますます強くなります。写真はベルファストで一番有名なホテルである、ヨーロッパ・ホテル。私の泊まったホテルのフロントで地図をもらった時、受付のお姉さんもこういいました。「これが有名なヨーロッパホテルよ、ほら、あの一番いっぱい爆撃を受けたところ。」そう、イギリス系資本の象徴として、隣にあるグランド・オペラ・ハウスと並んで何度もIRAのテロ攻撃の標的になったホテルです。アイルランドをまわっていると、ふとしたところで、いかにイギリスがアイルランドに残虐な植民行為をしたのかを思い知らされます。そしてアイルランドの誇り高き民族がいかに英国支配を苦々しく思ってきたのかも。ゴールウェイで泊まったカントリーハウスのGeorgeも、ブロンテが専門だと言った私にシャーロットの新婚旅行先がすぐ近くだったと教えてくれたとき、北アイルランドだと思ってたわ、と言った私に対して「ああ、アイルランドは昔は、当然一つだったんだよ」と言っていました。私自身の無神経な言葉を恥じ入った瞬間でした。

しかし、それは、おそらく過剰反応だったのかもしれません。ヨーロッパホテルの隣にあるヴィクトリア駅の説明書きを立ち止まって読んでいたら、そこでお客さんを待っていたタクシーの運転手さんが声をかけてきました。「君、歴史を読んでるの?」(ちなみに、アイルランドの英語はとても聞きやすく、少しアメリカ英語に近いような気がしました・・英国人の友人もそれには賛成してくれました。北アイルランドに来ると、英語がまたもや地方アクセントの強いイギリス英語になり、彼と話をするのにも一苦労。)ベルファストはとてもいいところだ、ロンドンなんかの方がよっぽど危ない、と力説するおじさん。確かに、そのおじさんにしても、ホテルの従業員さん達にしても、ベルファストで会った人々は親切でフレンドリーで、アイルランドの人たちと何ら変わりはありませんでした。そう、ベルファストというととかく私たちはテロとばかり結びつけてしまいますが、ごく普通の街なのです。イメージしていた空の暗さはその通りでしたが、それ以外はとても意外なことに、危ない街という印象はまったくありませんでした。

c0105386_5291091.jpg次の日には、北アイルランド唯一の世界遺産、ジャイアンツ・コーズウェイに英語のツアーバスを予約して乗っていきます。これまた絶壁を巡る旅。まずはナショナル・トラストの管理下にあるキャリック・ア・リードという吊り橋を目指します。これまた険しい断崖と、小島を結ぶ吊り橋なのですが、橋は一度にふたりずつしか渡ることができません。かなりこわそう。ワクワクしていたのですが、残念なことにこの日はあまりの強風のため、吊り橋は危険すぎて閉鎖。これまた、前日のニューグレンジと同じく、目前に涙をのみました。渡ってみたかった・・気を取り直して、ブッシュミルズというアイリッシュ・ウィスキーの蒸溜所へ。ものすごくおいしいウィスキーで、私も知っていたので、これも楽しみでした☆実際にここで蒸溜されているらしく、麦汁(wort)のにおいの立ちこめる中、蒸溜の過程を見て、ウィスキーを試飲。案内してくれたガイドさんに「なぜ氷なんか入れるんだ!」と怒られつつ、スッキリしたおいしいウィスキーを楽しみました。それからジャイアンツ・コーズウェイ↑。本当に奇観です。六角形の石柱が、海の中からごつごつと着きだしている様は、とてもおもしろい眺めでした。これは大昔に巨人が作った土手道だという伝説から来ている名前ですが、荒々しく吹き付ける潮風にあらがうように立つたくさんの六角柱を見ていると、大自然の不思議さをまざまざと見せつけられる思いでした。人間にはこんなものは絶対に作れませんよね。(なぜこんなものができるか。ガイドブックは解説してくれてますが、まったくさっぱり分かりません。水を抜いた水田に六角形のヒビがたくさん入るのと同じ原理だそうです。)ベルファストに帰って、もっとも有名なパブ(ナショナルトラストが管理しているらしい建物にある)クラウン・サルーンに行こうとしましたが、予約でいっぱいであきらめ、隣のロビンソンズでディナーを食べて、アイリッシュ・コーヒー(コーヒーに生クリームを入れ、たっぷりアイリッシュウィスキーを注ぎます☆)を楽しみました。ベルファストの街をあまり見られなかったのは残念でしたが、さまざまなもの、いろいろな風景が見られて、本当に心に残るアイルランドの旅でした。これで、アイルランドへの旅は終わり。イギリスに戻ります。

いや、戻る、はずでした。しかし、この日の夜中に、例の、テロ未遂事件が起こります。詳細は、次の日記で。
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by ellisbell | 2006-08-19 05:27 | trip

アイルランド(テロに思うこと)

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8月10日の朝は曇り空。朝7時半。今日、アイルランドを発って、英国本土、リバプールに戻ります。

アイルランドはずっと寒かったし、お天気が気になって、BBCをチェックしようとテレビをつけました。あまり旅行中にテレビを見ることはなく、今までもずっとチェックしていなかったのに、何か虫が知らせたのでしょうか。BBCのアナウンサーが緊迫した顔で何かを話しています。画面にはBreaking news(速報)のテロップがずっと流れています。情報も錯綜していて断片的にしか事情が分かりませんが、どうやら飛行機を爆破するテロが関係していて、空港が混乱しているらしいというのは分かります。アナウンサーが繰り返し、急ぎの用事でない限り、今日のフライトは取りやめるようにと呼びかけています。しかしDisruption in Airports(空港が大混乱)とあるだけで、いったい何が起こったのかほとんど分からず、不安だけがふくらみます。私の今日のフライトはどうなるんだ??

テレビで話されているのはヒースローがほとんど。ガトウィック(ロンドンで2番目に大きい空港)も少し出てきます。でも私が行くのはリバプール。国内線だから大丈夫なのかしら・・ベルファスト国際空港の様子も映し出され、人が減っている様子がうかがえます。どうするべきか。朝食後、とにかく早めに行ってみようとチェックアウトすることにしました。受付のお姉さんに、「いったい何があったの?フライトは飛んでるのかしら?」と聞いてみると、親切な彼女は、空港に電話してみてあげようと言ってくれます。なんと言っても私のフライトは、格安航空会社のeasyJet。飛ばなかったら保証してくれるかどうかすら分かりません。ネットでいろいろ調べて、彼女が問い合わせてくれたところでは、朝8時半の時点では飛ぶ予定だとのこと。ただしセキュリティチェックに時間がかかるから早く来るようにとの情報で、すぐに空港に向かいます。ベルファストに名残を惜しんでいる場合じゃない!

空港に着いてみるとやはり非常事態です。入り口に係員が立っていて、透明のビニール袋を渡しています。手荷物はすべて持ち込めないので、これにtravel essentials(お財布とパスポート、搭乗券)だけを入れるようにとのこと。easyJetのカウンターもいつもとは違って画面にAll Destinationsと出て、長蛇の列で、フライトは軒並み遅れているようです。次々とロンドン行きにフライトのキャンセルが出ています。私たちもとりあえず並んでみますが、カウンターに到達したところで、時間が早すぎてチェックインできないと却下。仕方がないのでコーヒーを飲みながら待つことに。不安な気持ちで画面を眺めていると、同行者がリバプール行きのキャンセルを発見。大慌てでカウンターに飛んでいきます。カウンターのお兄さんはさっきの人で、すべてのリバプール行きはキャンセルだから、明日まで飛ばないと言うだけ。みんな飛んでるじゃない。とにかく本土まで行きたいからどこかに振り替えてもらえないかと言ってみても、それはできない、チケットを買い換えてくれ、できるのは明日の便に振り替えるだけ、との一点張り。仕方がありません。次の日の朝、一番のフライトをとってもらって、同行者が昨日までいたホテルに電話をしてくれます。お部屋はあるらしく、一安心。本当に、ひとりぼっちじゃなくてよかった。ひとりだったら不安でたまらなかったと思います。仕方がないので、再度ベルファスト市内に逆戻り。バスの運転手さんに料金を払って、「フライトがキャンセルされたんだよ。市内に逆戻りなのよ。」というと、「何?狂ってるなぁ」とのコメント。本当に、何かが、おかしい。

IRAに代表される暴力行為の街、ベルファストで、それとは違うテロに遭遇するのもなんだか運命的な気がします。私自身は直接的な被害というのはそれしかありませんでしたが、暴力行為は何も生み出さないのに、世界はどんどん両極端に分かれていくような気がします。先日友達がくれたメイルで、日本での報道の中で、インタビューされた日本人観光客が、「添乗員さんはパニクっていたけど、観光客自体はそれほどでもなかった。だって何でもなかったんでしょう?」と言っていたと書いてきてくれました。彼女はそれに対して、「自分は絶対テロに遭わないという日本人独特の自信でしょうかしら」と書いていましたが、その自信は日本人だけではないのでしょう。こんなに世界が狭くなっていて、テロという暴力行為の目的自体も多様化していて、その原因すらも複雑で一つには特定できない、そんな時代に突入している以上、あらゆることは対岸の火事ではありません。今回はたまたま未然に防げたということですが、それも世界有数の管理社会イギリスが、世界最多の防犯カメラや情報網を駆使して、9.11以降常に危機感を覚えていたからなのです。先日、英国人の友人と話していて、イギリスは人種差別的な感情や摩擦がないことはないが、これだけ多様な民族を抱えている国にしては驚くほど少ない、と聞きました。しかし、私自身は、例えば湖水地方で、英国人ドライバーさんが、「イスラム教徒がたくさん入ってきているのは困ったものだ」とかなり強い口調で言うのを聞いたし(湖水地方は優雅なリゾートですが、すぐ近くにランカスター、マンチェスター、リーズなどの北部工業地帯を抱えています。英国有数のアラブ系人口を抱えた地帯なのです)、水面下ではいろいろな問題があるのでしょう。

テロという暴力行為は断じて許されるべきことではありません。しかし、何より今回のことで思うのは、容疑者は若い夫婦で、子供のミルクに爆発物を仕掛けていたという報道から、事態は新たな段階に入っているのだという実感です。人間として考えられない狂信的行為。しかし、軍事力という点において圧倒的な劣者であるテロリスト達は、そのような報復の仕方しか考えられないのでしょう。英国人の友達が言うところでは、急進的なイスラム教徒の一番恐ろしいところは、わずか4%にしかすぎない人口でいながら、イギリス社会を自分たちにあうように変えようとしていることだと彼女は主張します。去年の7.7のロンドン同時多発テロの際にねらわれたのは、エッジウェア・ロード、ロンドンにおけるイスラム教徒社会の中心部なのです。急進的な人たちの一番のターゲットは本当は同じ宗派のよりマイルドな人たちだと彼女は主張します。本当にいろいろな問題が複雑に絡まり合っていて、単にテロは恐ろしいと言うだけでは何の解決にもならないのです。しかし、再度舞い戻ったベルファストでBBCのインタビューを受けていたアメリカ人が、心配している?との問いに対して、「全然!私が帰る土曜にはもう大丈夫でしょう。」と答えていたことにも驚愕しました。ターゲットはアメリカだったと報道されているのに、自分は大丈夫というその「自信」はアメリカ人にも共有されているのでしょうか。あるいは、アメリカ人だからこそ、そのような自信を持っているのでしょうか。アメリカがどんどん世界の中から孤立していく、あるいは自らを選んで孤立させていく様を見ていると、なんだかうそ寒くなってきます。世界はどのような方向に進んでいくのでしょうか。先日、見送りに行ったヒースローは、1993年に私が初めて英国を訪れた時と同じ、厳戒態勢になっていました。当時はIRAのテロが頻発していましたが、今は国際的なテロ組織が世界中でテロを起こしています。

これは番外編。再びベルファストに戻ってまたもや旅行記を続けます。
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by ellisbell | 2006-08-19 05:25 | trip


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