Under the English Sky


英国、ケンブリッジでの生活で感じたことを書いていこうと思います。
by ellisbell
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アイルランド(テロに思うこと)

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8月10日の朝は曇り空。朝7時半。今日、アイルランドを発って、英国本土、リバプールに戻ります。

アイルランドはずっと寒かったし、お天気が気になって、BBCをチェックしようとテレビをつけました。あまり旅行中にテレビを見ることはなく、今までもずっとチェックしていなかったのに、何か虫が知らせたのでしょうか。BBCのアナウンサーが緊迫した顔で何かを話しています。画面にはBreaking news(速報)のテロップがずっと流れています。情報も錯綜していて断片的にしか事情が分かりませんが、どうやら飛行機を爆破するテロが関係していて、空港が混乱しているらしいというのは分かります。アナウンサーが繰り返し、急ぎの用事でない限り、今日のフライトは取りやめるようにと呼びかけています。しかしDisruption in Airports(空港が大混乱)とあるだけで、いったい何が起こったのかほとんど分からず、不安だけがふくらみます。私の今日のフライトはどうなるんだ??

テレビで話されているのはヒースローがほとんど。ガトウィック(ロンドンで2番目に大きい空港)も少し出てきます。でも私が行くのはリバプール。国内線だから大丈夫なのかしら・・ベルファスト国際空港の様子も映し出され、人が減っている様子がうかがえます。どうするべきか。朝食後、とにかく早めに行ってみようとチェックアウトすることにしました。受付のお姉さんに、「いったい何があったの?フライトは飛んでるのかしら?」と聞いてみると、親切な彼女は、空港に電話してみてあげようと言ってくれます。なんと言っても私のフライトは、格安航空会社のeasyJet。飛ばなかったら保証してくれるかどうかすら分かりません。ネットでいろいろ調べて、彼女が問い合わせてくれたところでは、朝8時半の時点では飛ぶ予定だとのこと。ただしセキュリティチェックに時間がかかるから早く来るようにとの情報で、すぐに空港に向かいます。ベルファストに名残を惜しんでいる場合じゃない!

空港に着いてみるとやはり非常事態です。入り口に係員が立っていて、透明のビニール袋を渡しています。手荷物はすべて持ち込めないので、これにtravel essentials(お財布とパスポート、搭乗券)だけを入れるようにとのこと。easyJetのカウンターもいつもとは違って画面にAll Destinationsと出て、長蛇の列で、フライトは軒並み遅れているようです。次々とロンドン行きにフライトのキャンセルが出ています。私たちもとりあえず並んでみますが、カウンターに到達したところで、時間が早すぎてチェックインできないと却下。仕方がないのでコーヒーを飲みながら待つことに。不安な気持ちで画面を眺めていると、同行者がリバプール行きのキャンセルを発見。大慌てでカウンターに飛んでいきます。カウンターのお兄さんはさっきの人で、すべてのリバプール行きはキャンセルだから、明日まで飛ばないと言うだけ。みんな飛んでるじゃない。とにかく本土まで行きたいからどこかに振り替えてもらえないかと言ってみても、それはできない、チケットを買い換えてくれ、できるのは明日の便に振り替えるだけ、との一点張り。仕方がありません。次の日の朝、一番のフライトをとってもらって、同行者が昨日までいたホテルに電話をしてくれます。お部屋はあるらしく、一安心。本当に、ひとりぼっちじゃなくてよかった。ひとりだったら不安でたまらなかったと思います。仕方がないので、再度ベルファスト市内に逆戻り。バスの運転手さんに料金を払って、「フライトがキャンセルされたんだよ。市内に逆戻りなのよ。」というと、「何?狂ってるなぁ」とのコメント。本当に、何かが、おかしい。

IRAに代表される暴力行為の街、ベルファストで、それとは違うテロに遭遇するのもなんだか運命的な気がします。私自身は直接的な被害というのはそれしかありませんでしたが、暴力行為は何も生み出さないのに、世界はどんどん両極端に分かれていくような気がします。先日友達がくれたメイルで、日本での報道の中で、インタビューされた日本人観光客が、「添乗員さんはパニクっていたけど、観光客自体はそれほどでもなかった。だって何でもなかったんでしょう?」と言っていたと書いてきてくれました。彼女はそれに対して、「自分は絶対テロに遭わないという日本人独特の自信でしょうかしら」と書いていましたが、その自信は日本人だけではないのでしょう。こんなに世界が狭くなっていて、テロという暴力行為の目的自体も多様化していて、その原因すらも複雑で一つには特定できない、そんな時代に突入している以上、あらゆることは対岸の火事ではありません。今回はたまたま未然に防げたということですが、それも世界有数の管理社会イギリスが、世界最多の防犯カメラや情報網を駆使して、9.11以降常に危機感を覚えていたからなのです。先日、英国人の友人と話していて、イギリスは人種差別的な感情や摩擦がないことはないが、これだけ多様な民族を抱えている国にしては驚くほど少ない、と聞きました。しかし、私自身は、例えば湖水地方で、英国人ドライバーさんが、「イスラム教徒がたくさん入ってきているのは困ったものだ」とかなり強い口調で言うのを聞いたし(湖水地方は優雅なリゾートですが、すぐ近くにランカスター、マンチェスター、リーズなどの北部工業地帯を抱えています。英国有数のアラブ系人口を抱えた地帯なのです)、水面下ではいろいろな問題があるのでしょう。

テロという暴力行為は断じて許されるべきことではありません。しかし、何より今回のことで思うのは、容疑者は若い夫婦で、子供のミルクに爆発物を仕掛けていたという報道から、事態は新たな段階に入っているのだという実感です。人間として考えられない狂信的行為。しかし、軍事力という点において圧倒的な劣者であるテロリスト達は、そのような報復の仕方しか考えられないのでしょう。英国人の友達が言うところでは、急進的なイスラム教徒の一番恐ろしいところは、わずか4%にしかすぎない人口でいながら、イギリス社会を自分たちにあうように変えようとしていることだと彼女は主張します。去年の7.7のロンドン同時多発テロの際にねらわれたのは、エッジウェア・ロード、ロンドンにおけるイスラム教徒社会の中心部なのです。急進的な人たちの一番のターゲットは本当は同じ宗派のよりマイルドな人たちだと彼女は主張します。本当にいろいろな問題が複雑に絡まり合っていて、単にテロは恐ろしいと言うだけでは何の解決にもならないのです。しかし、再度舞い戻ったベルファストでBBCのインタビューを受けていたアメリカ人が、心配している?との問いに対して、「全然!私が帰る土曜にはもう大丈夫でしょう。」と答えていたことにも驚愕しました。ターゲットはアメリカだったと報道されているのに、自分は大丈夫というその「自信」はアメリカ人にも共有されているのでしょうか。あるいは、アメリカ人だからこそ、そのような自信を持っているのでしょうか。アメリカがどんどん世界の中から孤立していく、あるいは自らを選んで孤立させていく様を見ていると、なんだかうそ寒くなってきます。世界はどのような方向に進んでいくのでしょうか。先日、見送りに行ったヒースローは、1993年に私が初めて英国を訪れた時と同じ、厳戒態勢になっていました。当時はIRAのテロが頻発していましたが、今は国際的なテロ組織が世界中でテロを起こしています。

これは番外編。再びベルファストに戻ってまたもや旅行記を続けます。
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by ellisbell | 2006-08-19 05:25 | trip
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