Under the English Sky


英国、ケンブリッジでの生活で感じたことを書いていこうと思います。
by ellisbell
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ハワース再訪

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今日もケンブリッジは秋とは思えないいいお天気。

しかし私は、旅行のタイトスケジュールが祟ったか、夜遊びが祟ったか、なんだかのどの奥がひりひりで、風邪を引きそうな気がします。ひどくならないように、はちみつ入りのショウガ湯を飲んで、お部屋を暖かくして、おとなしく蟄居中。でもヨーロッパは乾燥がひどいので、つらいです(涙)。ひどくならずに治りますように☆

さて、2度目のハワース探訪は、秋晴れの日曜日でした。ヨークシャー・デイルズ国立公園の外れにあるハワースは、「嵐が丘」の主役とも言うべきムーア(荒野)に囲まれた小さな村。前回、夏の盛りに訪れたときにはムーアを一面に埋め尽くす赤紫色のヒースの大群に感激しましたが、今回のムーアは枯れ尽くした赤茶色のヒースに覆われているはずです。ヨークから見ると、ほとんど緯度は変わらず内陸に入るだけですが、ムーアを渡る風は強く激しく、たくさんの自然が残る村はずれに到着すると、爽やかで力強い空気に迎えられます。英国らしい緑の木々に覆われた優しい田舎とは対照的に、強い風に阻まれてほとんど高い木が生えないムーアが広がる大地。その中に、ぽつんとある古い街並み。もちろん今では古い村のはずれには住宅街のようなものもあり、近代的な風車が遠景に見えていて、姉妹が暮らしたハワースそのままという訳ではないのですけれど、この荒野と、急勾配のメインストリートは、150年変わらないままなのです。 c0105386_5225719.jpg教会と、その裏にある墓地は、秋の柔らかい光の中で、変わらないたたずまいを見せていました。この墓地に、ブロンテ家ゆかりの人物もたくさん眠っています。作品を理解するのに作家のことを知るべきだとか、その地を訪れなくてはならないとか、そのようなことは思いませんが、やはりこの地をエミリ・ブロンテが歩いたと考えることは、少なくとも私には、とても感慨深いものがあります。不思議なことに、「ジェイン・エア」を書いたシャーロットも、末娘のアンも、ハワースに暮らしたのですし、たくさん牧師館(今では博物館)に彼女たちの遺物があるのですが、実際にハワースで思い出すのは、ブロンテ家唯一の男の子であったブランウェルのこと、そして天才詩人エミリのこと。教会に登る数段の階段を見て、ブランウェルが恋のために身を持ち崩してジンとアヘンにおぼれ、亡くなる前日にこの石段が登れないほど身体が弱っていたのか、と悲しくなり、牧師館の台所を見て、ここでエミリはパンをこねながらドイツ語を勉強し、「嵐が丘」を書いたのだと崇敬の念に打たれます。おそらく、このふたりがハワースをほとんど離れず、その地にもっとも固く結びついているからなのでしょう。シャーロットは世俗的成功を手に入れ、ロンドンなどでも活躍したし、物静かで誠実なアンは、一番年下であるにも関わらず、一番先に家庭教師としてのつらい勤めを引き受け、最後はスカーボロに眠っているのですから。やはり私がこの地で思い出すのが、姉妹の中でもっとも男性的で荒野を何より愛したエミリと、唯一の男の子としての責務に応えられず、失意のうちにハワースで一生を終えたブランウェルのことだというのは訳あることなのかもしれませんね。

c0105386_5233370.jpg前回泊まったInnでサンデイ・ランチ(ローストポーク、もちろんアップルソース☆)を食べて、牧師館と教会を見ます。前回も思いましたが、ギャスケルの書いた伝記でイメージするハワース、陰鬱な牧師館と不機嫌な父親の管理する厳格な教会というイメージは、ここにはまったくありません。ハワース教会は、今回も光にあふれ、ステンドグラスの静謐さに心が静まる場所でした。そして、ムーア。秋のムーアは想像通り、一面の赤茶色に覆われていました。この光景があるからこそ、夏のあの一瞬の美しさがさらに際だつのですよね。そして、同じくらい、この光景も素晴らしく、とても美しいのです。今年二度目のハワースで、どこに何があるのか、どういう風景なのかはよく知っているはずなのに、実際に、厳しい自然の中を吹きすさぶ風に吹かれて、そこに「大地」があるということを否応なく実感させられることは、とても感動的な経験です。「嵐が丘」はやっぱりこの大地がなくては存在しなかった名作なのでしょう。そして、やっぱりこの地には、エミリの天才がそれに呼応した、何か特別なものが存在するのでしょう。来週行くときには、もう少し時間を作って、ゆっくりと秋のムーアを歩きたいと思います。
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by ellisbell | 2006-11-07 05:24 | trip
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